2011年1月8日土曜日

アジアから。

日本人との会話の中で長期で放浪してますというと、
「自分探しですか」とよく聞かれる。
旅で何かを見つけたいとか、どこかを変えたいとか、特に思わない。自分がしっかりしてるというわけではないが。
わざわざ探さなくても、時に情けなくて、消えたくなっても自分は嫌でもここにいるのに、何を探せというのかわからない。旅の後、もしかしたら自分が少し変わるのかもしれないが、それがいいのか悪いのか。別に悪いほうに変わるとしても、それでも旅に出て、色々知りたかった。
自分のいいところも嫌なところも、僕がそう望まなくても、日本でも旅先でも存在し続ける。
日本での立場が現実で、旅が夢のようなものだといい、現実からの逃避だというが、それならば僕は、日本で頑張っている友達の話を聞くと、逆に夢から現実に逃避したくなるほどに根が真面目な人間みたいだ。
時間が経つにつれ、旅は刺激的でバックパッカーには個性的な人が多くて、すっごく最高!みたいなノリの人はとても苦手になってしまった。そして話しながら頭ではこう思ってしまう。
旅先で樹の一本も植えず、一ドルの寄付もしないバックパッカーにとって、旅は純粋なマスターベーションにすぎないのに。旅が必要以上に素晴らしいと思いたがる人にはなりたくない。
日本で働いてたほうがどれだけ社会のためになるか。はっきり言って世界中を旅するなんて全く必要のないことだ。得られるものは具体意味不明の形容詞、「すごいね」くらいか。
そしてこの自慰行為を何か崇高なものだと考え出したらこれはもう救いようがない。
こういうことは去年の自分もわかっていた。
それでも時間とお金をかけて旅に出たかいはあったのか。
僕は―――
たとえば。

空を映す、風なき湖面のように、この目に流れる景色を映し、
大地に川が流れるように、僕の中を血が流れている。
波が寄せて引くのをやめないように、たえず息をしていることに気づく。
野の風に堂々と身を晒して、
どんな環境にあっても、わずかこの数ミリの薄い皮膚にその湿り気を湛えながら、
街から街へ。

たとえば僕は、そんな旅がしたかった。
湖面に落とした自分の影に、
ただ繰り返されるその波の音に、
孤独を悟るとしても。


地図さえなかった昔のような、本当に命がけのギリギリの旅はできないし、結局観光地を点でつなぐのがルートになってしまう今は、大げさに聞こえるけれど、それでもよかった。
この世に存在する‘理’に包まれて自分も自分の体も生きているのだと、試したかった。手ごたえみたいな、世界と一緒になりたいみたいな感じ。そんな感覚が得られたとき目に映った世界は、より原色に近く、色濃く僕の体に迫るように思えた。
アメリカに友達が来てくれたことで、ガキのように心が喜んだのもまた自分だが、そのためにはやはり旅は一人じゃなければならない。
最近、出会った景色やできごとに対して、ふと我に返り、これをどんな風に形容しようか、伝えようかなどと考えている憎むべき自分に気づく。
ひとりで見ているのに、誰かに介入されているがごとく、目の前の世界に対しての没入を失ってしまうことは、旅をしている者として、これほどくだらない事はない。
ファインダーをのぞき被写体を追う事に必死で、実物を見ないならば、日本でコタツに入ってドキュメンタリーを見ることと同等以下である。
その度に、必要なのは世界と我と今という時間、それらが溶け合って存在することだけだと、自分に言い聞かせている。
地球を一周して、すでに帰ろうと思えば船でさえ日本に帰れるそうな距離まで来た。
でも時間が許す限り、もう少し流れよう。アジアに帰ってきた今、また改めてそんな風に思っている。


2010年は僕にとって長い年でした。
いろんなことがあって、それが何かしらでつながっていたのか、はたまた、別にそうでない気もする。

休学したこと。そのために家出して必死に勉強したこと。突拍子もないプロジェクトをやったこと。アフリカを縦断したこと。ヨーロッパ、南米と駆け回ってアメリカ横断も無事に終えたこと。
これら全てや、もっと言えば、この世に生を授けて、23歳になって2011年を迎えられること。
それらが、針の穴を通す確率が、いくつもつながってきた結果であるような気もするし、
反対にいや、これくらいのことは至極当然だ、という気もする。

いずれにしろ、これまで安全にいい旅ができたことに感謝して、
いろんな人に支えてもらっていること(抽象的な意味ではなく)に感謝して、新年に向かうとしよう。

これから時間が許す限りの僕の旅路を、今までどおり光で照らしてくれますように。
正月を終えて一息ついているだろう日本の神様にそうお祈りしながら、僕の年始は過ぎ去っていったらしい。
皆さん昨年は本当にお世話になりました。今年もどうぞよろしくお願いします!
僕は明日正月休暇(?)を過ごした香港から
中国、桂林に立ちます。





0 件のコメント:

コメントを投稿